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アメリカの異郷ニューメキシコ州 ~太古のスピリッツが息づく土地~

アメリカ大自然

ロッキー山脈の南麗に広がるニューメキシコ州は「魅惑の地」と呼ばれる。茶色やピンク色のアドビ建築の上に、吸い込まれそうな雄大な蒼空が広がっている。数千年続くネイティブアメリカンの基層文化。その上に、スペイン、アメリカ西部の文化が幾層にも重なり、アメリカの中でも独特の文化と歴史と自然の美しさを誇る。まさに旅人の心を魅了するところだ。

■ 町が立体美術 サンタフェ

アドビ煉瓦の建物が軒を連ねるサンタフェのダウンタウン。ネイティブアメリカンの伝統的な建築スタイルで、直線と曲線が幾何学的に微妙に絡み合い、ターコイズブルーの大きな窓枠が美しい。

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ニューメキシコ州は「魅惑の地」と呼ばれる。この地域に住み続けているネイティブアメリカンの基層文化の上に、メキシコから入ってきたスペイン文化、さらにアメリカ西部の文化が入り混じり、他の州とは一味違う独得の文化を醸し出している。

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サンタフェが「世界のベストタウン」に常に選ばれるのは、エキゾチックな雰囲気と、町に漂う芸術性だ。世界各国から芸術家が集まってきた。

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画家ジョージア・オキーフや作家D.H.ローレンスもこの町の魅力に取りつかれた芸術家だ。市内にギャラリーは230軒以上もあり、キャニオン・ロードの1マイルの通りには100軒以上のギャラリーが並んでいる。アメリカでは、ニューヨーク、サンフランシスコに次いで3番目のアート市場。市民の6人にひとりはアート関係者だといわれる。

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サンタフェの北部にあるタオスの町のはずれに世界遺産に登録されたタオス・プエブロがある。ニューメキシコに存在する19ものプエブロ族のひとつ、タオス・プエブロの集合住宅だ。

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古いものでは1000年も前に造られたアドビ様式で、今も人が住んでいる。幾層もの住宅の、高いところでは4階もあった。奇抜といえば奇抜、モダンといえばモダン。一雨降った後、住居から夕餉を準備する煙が立ち上っていた。遠くから眺めると大海に浮かぶ軍艦のように見えた。

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■大自然の驚異と神秘

アルバカーキの滞在を楽しみ、州の南東部に広がるカールスバッド・キャバーンズ国立公園に向かった。「ビッグ・ルーム」と呼ばれる空洞に降りていくと、洞窟というより地底世界へ入っていく気分になった。1995年世界自然遺産に登録されている。

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この洞窟から日没前に、30万匹ものコウモリがグループを組んで飛び立つ。薄暮の空に描かれる巨大な群舞。竜巻のように螺旋状に空に駆け上がったかと思うと左右に急降下、パチパチという羽音が地上でも聞こえる。上空を大きく旋回していく様は、モノクロのオーロラのような気がした。

途中ロズウェルという小さな町に立ち寄った。ここには世界唯一の「UFOミュージアム」がある。1947年、ロズウェルの郊外にUFOが墜落し、その残骸が回収され秘匿されたという「ロズウェル事件」が起こったからだ。館内には、ロズウェル事件の新聞記事、報告書、世界のUFO写真、エイリアンを手術している妙にリアリティのあるジオラマなどが並んでいた。博物館というには高校生の文化祭の展示物という感じがするが、このアバウトさがいい。

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さらに南下してホワイトサンド国立モニュメントへ。700平方キロに及ぶ世界最大級の砂丘で、東京都の3分の1の面積がある。その砂丘は純白で、まるでスキー場のようだった。近くにある世界最大級の鍾乳洞も素晴らしい。

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アルバカーキから北西にドライブすること3時間半、ニューメキシコ、コロラド、ユタ、アリゾナの4州の州境が交わる「フォー・コーナーズ」の近くに、先住民のアナサジが建設したチャコ・カルチャー国立歴史公園がある。標高1890mの高地に広がる北米大陸最大の遺跡だ。

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チャコ渓谷に沿って、西暦850年頃から1150年頃にかけて造られた中央集権的都市遺跡だ。周辺の集落とは放射線状の道路で結ばれ、近隣と交易をしていた。灌漑設備や地下貯蔵庫も完備されて2000人が生活していたと推測されている。宗教的儀式を行う礼拝所は「キバ」と呼ばれ、地下に作られた。 一番の見どころは「プエブロ・ボニート」だ。巨大な集合住宅で、300年の歳月を費やして建造されたという。4階建て、600室、40もの「キバ」を擁している。チャコの人々は工芸や幾何学的なデザインなどに優れ、古代の中心都市として栄えた。この遺跡は、1987年に世界文化遺産に登録された。

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北米最大のユネスコ世界遺産、チャコ・カルチャー国立歴史公園では今も数々の謎に包まれた遺跡が見学できる。

<p”>文・写真●森本剛史
Text & Photo by Takeshi Morimoto
取材協力●アメリカ西部5州政府観光局

 

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