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現地オプショナルツアーのJTB ルックアメリカツアー

ケニア 赤道直下のサファリ・リゾート ~ Kenya ~

アフリカ

動物たちの壮絶な営みが日々繰り広げられるサバンナ。その広大なサバンナをサファリ・カーで駆け巡り、豪華なロッジで、ゆったりとアフリカの誘惑にひたる。マサイ・マラ国立保護区で、ケニアならではの野生の王国を楽しんだ。

好奇心旺盛なのは人か動物か サファリ・カーに興味を示すキリンの親子

「アフリカの水を飲んだ者は、必ずまたアフリカへ戻ってくる」――。赤道直下とはいえ、標高は約2000メートル。高原の爽やかな風につつまれて冷えたビールを飲みながら、何度かその言葉を思い出していた。ここは、マサイ・マラ国立保護区の一角にあるイルモラン・キャンプ。ビールは久しぶりに飲むタスカーである。ラベルに像のイラストが描かれた、ケニアで一番人気の銘柄だ。20年ほど前、初めてケニアを訪れてウォーキング・サファリを体験した懐かしい記憶がよみがえる。ブッシュに設営したテントを拠点に、ライフルを携えたアメリカ人ガイドと、槍を手にした老マサイとともにサバンナを歩き回ったものだ。当時のビールはほとんど冷えてはいなかったが、今はぎんぎんに冷えている。

*****苛立つ象に睨まれて 早々に退散した***** 今回はウォーキング・サファリではなく、サファリ・カーでサバンナを駆け巡るドライブ・サファリだ。舞台となるマサイ・マラ国立保護区は、野生動物の多さではケニア随一を誇る。首都ナイロビから小型ジェット機でおよそ40分、旅の拠点としたのは、その一角にあるロッジのイルモラン・キャンプ。初日のドライブ・サファリでは、幸運にもアフリカ象の群れと出くわした。それも子供連れの十数頭の群れが2つ。草を食べながらゆっくりと移動する彼らに近付いていくと、群れのリーダーらしき巨像が互いに鼻を振り回してこすり合っている。ガイドによると、これは同じ母系ファミリー同士の挨拶だという。大人の象を真似して、子供の象もさかんにこすりあっている。

巨象が互いに鼻をこすり合うのは同じ母系ファミリー同士の挨拶だという

なるほど、そんなこともあるのかと興味津々、カメラを向け過ぎていたのが失敗だった。気が付くと目の前ほんの7〜8メートルのところで若い象が耳を広げ、こめかみから汗をたらりと流しながら、さかんに首を振っている。こちらを睨みつける形相に思わず声を上げると同時にドライバーが急発進したので助かったが、後で聞くとこれは象の攻撃サインだった。象は、苛立ってくるとこめかみから汗を流すのだという。

***** ライオンのおこぼれ 優雅なテントロッジ *****翌日のドライブ・サファリの途中、ドライバーが低い声で「シンバ!」と叫んだ。シンバとはスワヒリ語ライオンのことだ。息をひそめて近づくと、アカシアの木の下でメスのライオンが物憂げな表情で寝そべっていた。10数頭のハイエナがシマウマの残がいに食らいつき、ハゲタカの群れが遠巻きに見つめている。先にシマウマを食べてすでに満腹なのか、メスライオンはおこぼれにあずかっているハイエナを見向きもしない。血染めのろっ骨と骨をかじるガリガリという音が不気味だ。

ざわめくハイエナたちを間近に、弱肉強食の壮絶なシーンに遭遇した

すでに満腹なのか、悠然とたたずむメスライオン

豊饒な野生の世界を目の当たりにし、高揚した気分で戻ってくると素晴らしいロッジライフが待っている。ぼくに用意された大きなテントには、キングサイズのベッド、立派なバスタブ、シャワーにトイレもある。

広く快適なイルモラン・キャンプのテント

朝食前には「グッドモーニング・サー」の声とともに、ケニアンティーとビスケットが運ばれてくる優雅さ。そしてスープ、サラダ、ステーキのディナーにはパイとピーチアイスクリームのデザートまで付いている。

ロッジでの昼食は眺めの良いオープンガーデンで

ところが、贅沢なロッジライフもまた常に野生の世界と隣りあわせである。すぐ下の川にはカバの一群が生息し、テントの周囲はイボイノシシがうろうろしているのだ。問題は巨体のカバ。夜行性の彼らはロッジを横切って草を食べに行くので、万が一に備えてライフルを持った警備員が深夜から早朝までロッジ内を見回るという。カバが崖をよじのぼってくる? まさか…。半信半疑だったが、その日の深夜、夢うつつのなかで確かに「ブハッー、ブーッ、バウーッ!」という重低音の声がしばらく響きわたっていた。

イルモラン・キャンプのすぐ下を流れる川には30頭ほどのカバの群れがいた

文 ● 木村小左郎
Text by Kosaburo Kimura
写真 ● 高沢 昭
Photo by Akira Takazawa
取材協力 ● ケニア観光局、カタール航空