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大富豪J・P・モルガンの私邸のミュージアム 知られざるザ・モルガン・ライブラリー、そしてジキル島での秘密会議とは?

目からウロコのトラベル・コラム「旅のエスプリ」ニューヨーク

目からウロコのトラベル・コラム「旅のエスプリ」

大富豪J・P・モルガンの私邸のミュージアム
知られざるザ・モルガン・ライブラリー

ニューヨークの美術館と言えばまずはメトロポリタン美術館、フェルメールが3点もあるプライベートコレクションのフリックコレクション、螺旋系の建物で有名なグッゲンハイム、MOMAとして親しまれている近代美術館が有名ですね。この他にもマイナーですが、日本がフィリピンの10分の1の大きさで描かれている大航海時代の地図の宝庫のスパニッシュ・ミュージアムとか、思わず覗いてみたくなるミュージアム・オブ・セックスなど、なんと83ものミュージアムがあります。

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その中ではあまり知られていませんが、今回はミッドタウンの閑静な住宅地、マディソン街の38丁目にあるザ・モルガン・ライブラリー&ミュージアムをご紹介します。すぐ近くにあるニューヨーク図書館の巨大な閲覧室も圧巻ですが、ここは名前の通りミュージアムというよりジョン・ピアポント・モルガンの蔵書を陳列した荘厳な図書室が見ものです。 

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J・P・モルガンは、ロンドンのロスチャイルド家から支援を受けて金融業を始めたジョージ・ピーボディーとパートナーを組んだジニーアス・スペンサー・モルガンの息子で、父の事業を拡大しカーネギーなど鉄鋼会社を次々と買収、USスチールを設立、そして陸上運輸(鉄道)を支配下に治め大西洋の海運業にも進出、タイタニック号の実際のオーナーでもありました。いったいどの位のお金持ちだったのかというと、彼の資産はミシシッピー川の東22州合計のそれに匹敵するといわれていました。

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彼は書物、絵画、時計などの芸術作品の熱心なコレクターで、死後その膨大なコレクションはメトロポリタン美術館に寄付され、一部はモルガンの私邸にモルガン・ライブラリーとして展示されたというわけです。 世界に48部しか存在が確認されてない、グーテンベルグの聖書(3部もある)や、所々に黒く塗りつぶした跡があるベートーベン、モーツァルト、ラベルなどの実筆の譜面も展示されています。当時の彼のコレクションの芸術的価値は5千万ドルと言われていましたから、今の価値にすると12億ドルにもなります。メトロポリタン美術館の総価値が1000億ドル以上と言われているので、いかに膨大なコレクションだったかがわかりますね。

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J・P・モルガンの別荘、ジキル島の秘密会議
世界の富の1/6を持つ資産家が決めた事とは?

当時の東部のお金持ちは冬はフロリダなどで休暇を取るのが一般的で、J・P・モルガンも、最近世界一美しい街に選ばれたチャールストンから海岸沿いに南に車で2時間のところにあるジキル島を避寒地として購入しています。さて1910年11月、このジキル島の別荘である会議が行われました。参加者は次の7人。当時この7人の資産合計は世界のそれの1/6を占めていたとされます。表向きにこの会議を主催したのは、ネルソン・オルドリッジ共和党上院議員、しかし陰の首謀者はもちろんJ・P・モルガンです。一体全体何が話されたのでしょうか?

ポール・ウォーバーグ、ロスチャイルド銀行頭取
ベンジャミン・ストロング モルガン銀行
チャールズ・ノートン第一銀行頭取
フランク・ヴァンダービップ シティー銀行頭取
ネルソン・オルドリッジ共和党上院議員
アブラハム・ピアット・アンドリュー米国財務省、そしてJ・P・モルガン

世界のメジャーな銀行のトップ5人がニュージャージーのホーボーケンに集まり、特別列車でジキル島に向けて出発したという事実は新聞記者たちはつかんでいたものの、何の目的があったのかは数年後になるまでわかりませんでした。 表向きは、1907年に起きた恐慌の防止策を検討する銀行制度改革とされていましたが、実は連邦準備銀行設立のための法案を造る事が目的だったのです。 

このオルドリッジ法案と呼ばれた法案は民主党の強い反対で1度は廃案になりましたが、法案を通すために、なんと大統領の首を挿げ替えるという手を考えます。当時国民に人気のあったタフト大統領に対し、セオドア・ルーズベルトを担ぎ出し共和党の票を割らせ、賛成派のウッドローウィルソンを当選させてしまいます。しかもほとんどの議員が休暇で選挙区に戻るクリスマスの時期に法案をあっさりと通過させてしまい、しかも告知もないままに1913年12月にフェデラル・リザーブ(FRB)銀行設立の法案が生まれてしまいました。同時に全国民から所得税を徴収するというIncome Tax法案も成立しています。 

FRBは通貨発行権があって、ドルを好きなだけ印刷できるし、公定歩合も自由に決定できるのだから政府機関であると大半の人は信じて疑わないかもしれませんが、実はJ・P・モルガン他、世界の富を支配する人達が造った私的な銀行でした。政府は国債を発行してFRBが印刷したお金を借り、利子を払う、その利子のために国民の税金が必要という仕組みができたのです。大西洋の単独飛行に成功したリンドバーグの父はミネソタ出身の議員でしたが、「アメリカ史上最悪の政府による犯罪だ」と酷評したそうです。その後リンカーンとケネディーはアメリカ史上で唯一、政府通貨の発行を宣言した大統領でしたが、暗殺によってその試みは実現することはありませんでした。法案の成立に尽力したウィルソン大統領も、さすがに何かが変だと気が付いたのか1916年には「この国の全ての成長、我々の全ての活動は、一握りの男たちの手に握られている」と言い、死ぬ前には「私は騙されてFRB法案に署名した、私はうっかりしてこの国を滅亡させてしまった」と言ったそうです。

さて、この11月にはアメリカの大統領が決まりますね。共和党候補のトランプ氏はメキシコとの国境に万里の長城並の壁を造るなどと壮大なことを言っていますが、同時に政府がお金を刷ればいつでも財政赤字を埋める事はできるとも言っています。さて果たして今までのアメリカの指導者がなし得なかった事を本当に実現したいのか、または万里の長城のような大言壮語の一種なのか? アメリカの有権者がどのような判断をするのか非常に興味深いところです。

 

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関 克久