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150年前、米女性を熱狂させた日本人男性アイドル? 「侍を一目見よう」ニューヨークで大歓迎

目からウロコのトラベル・コラム「旅のエスプリ」

旅のエスプリ Vol. 5

150年前、米女性を熱狂させた日本人男性アイドル?
アメリカ人に人気の日本人男性アイドルと言われると、誰を思い浮かべますか? 女性アイドルなら、今をときめく「きゃりーぱみゅぱみゅ」がいますが、意外と日本人の男性アイドルでアメリカ人に知られている人はいないのではないでしょうか?
「侍を一目見よう」ニューヨークで大歓迎
当時撮影された立石斧次郎の写真
しかし、今から遡ること150年以上前に、アメリカ人女性に大人気となった日本人の少年がいました。その名は立石斧次郎、徳川幕府が派遣した万延元年遣米使節団の一員としてアメリカを訪れた17歳の通訳見習いでした。

ボーハタン号の船上で呼ばれていた、幼名の為八を短くした「ため」が、アメリカ人水兵たちには「トミー」と聞こえたようで、以後、トミーが彼のニックネームとなりました。

トミーこと斧次郎は、オランダ語通詞の養父と暮らしていたため、日本でも外国人と会う機会が多く、生まれもっての社交的な性格も相まって、アメリカ人相手でもまったく物怖じすることがなかったそうです。

そして、トミーを含む岩倉遣米使節団はハワイに立ち寄った後、サンフランシスコに上陸。パナマ経由で東海岸のワシントンDCに到着し、以後、東海岸の主要都市を巡りました。
「Left Figure, Ozutsu, Soldier, Nex Figure, Tateishi Onegero[Tateishi Onojiro], or Tommy, Noble, Interpreter 1860」と解説がある
[左]1860年6月18日 ニューヨークの市庁舎で、ウッド・ニューヨーク市長に歓迎される使節団[右]1860年6月23日、マンハッタンのレイト・ストリートの砂糖の精製工場を見学する視察団

1860年6月16日、一行は日米和親条約の批准書の交換を目的にニューヨークを訪れました。4日間の滞在で、2回のパレード、3回の公式なパーティーが開催され、ニューヨークは街をあげて遣米使節団を大歓迎しました。市民は「日本からやって来た侍を一目見よう」とパレードに詰めかけたそうです。

ところで、これらのイベントにかかった費用は実に8万2千ドルと言われています。当時の4ベッドルームの家賃が4.45ドルだったことを考えると莫大な額です。
[左]パレードを歓迎するために、ビルの窓に掲げられた日の丸と星条旗[右]実際に使用された日の丸と星条旗"
流行歌にまでなった17歳のトミー
大歓迎を受けた一行ですが、その中でも一番人気を誇ったのが言うまでもなくトミーでした。彼の愛すべきキャラクターはたちまち大人気となり、多くの女性から宿泊先のホテルにラブレターが届けられるほどだったとか。まさに現代の「アイドル」のようですね。その人気は、彼をテーマにした歌が作られるまでに沸騰したのです。「トミーポルカ」という、その歌は以下のような内容でした。

奥さんもお手伝いさんも

そのかわいい小柄な男性を取り囲みつきまとう

その名はトミー、ユーモアのあるトミー

日本から来たトミー
当時撮影された立石斧次郎の写真
立石斧次郎の名刺と思われる札
「トミーポルカ」は、遣米使節団がニューヨークを訪問した150年後の2010年に、高原守・ニューヨーク・シンフォニック・アンサンブル音楽監督によって見事に蘇りました。

さて、アメリカを巡り、香港経由で帰国したトミーは、その後、幕府の通訳として活躍しました。その頃に撮影された1枚の写真があります。アメリカ製のビールを酌み交わすトミーと兄の姿を映したものです。江戸末期にビールを笑顔で飲む侍という、何とも不思議な印象を与える写真ですが、同時にトミーが非常にアメリカナイズされた先進的な人物だったことがわかります。そして、その写真をラベルにした侍ビールが以前に横浜高島屋で限定販売されていたそうです。

ちなみに、テレビ朝日系列でアナウンサーとして活躍する長野智子さん(「朝まで生テレビ」など)は、トミーの曾孫に当たります。トミーは明治になってから、縁祖の長野姓に改名したのです。

それにしても、150年前のアメリカ人女性を熱狂させたトミーがどれだけ魅力的な人物だったのか、できることならタイムマシーンに乗って実際の彼と当時の人気ぶりを見てみたいものですね。

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関 克久

関 克久

Sales & Marketing Div., GM at JTB USA Inc.,
旅行のプロデュースに携わって30年。趣味は写真。「百聞は一旅に如かず」旅に出て初めてわかるのは、実は故郷の良さなのかも知れません。旅は百薬の長がモットーです。
関 克久

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