◆散歩の始まりはト音記号
ウィーンの音楽散歩は、市街中央の王宮(ホーフブルク)から。ここは、ウィーンを帝都と定め、640年もの間支配したハプスブルク家歴代の皇帝が住居としたところだ。ハプスブルク家の栄華は、もちろん音楽にも影響を及ぼした。 しかし、それだけではない。ウィーンで必ず訪れたい場所が実は王宮庭園内にあるのだ。それは、モーツアルト像と、ベゴニアでかたどられたト音記号の花壇。楽譜の最初がト音記号で始まるから、散歩もここからスタートしようというわけである。まずはここで写真を撮ろう。
ウィーンの中心地には町を取り囲む円形の大通りがあり、リングという愛称で呼ばれている。リング内の南西部分に王宮が位置している。もちろんフランツ・ヨーゼフ1世に嫁いだエリザベート皇妃も王宮に住んでいたわけで、2,600室のうち、皇帝夫妻が使用した22室が一般公開されている。
***その他ウィーンの宮殿/寺院***
ベルヴェデーレ宮殿
シェーンブルン宮殿
シュテファン寺院
◆世界3大オペラ座は パリ、ミラノ と ウィーン
王宮庭園の後は、音楽の都ウィーンが世界に誇るウィーン国立歌劇場、つまりオペラ座へ。
風格があるオペラ座の建物正面はリング通りに面している。もともとは宮廷歌劇場として1869年に落成。
こけら落としにはモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」が上演された。ウィーンでは1年のうち300日は必ずどこかでオペラを上演しているといわれるほどオペラが盛んだ。
オペラ座のシーズンは9月から翌年6月まで。ここで日本人指揮者の小澤征爾が2002年から今年6月まで音楽監督を務めていたのだから、すばらしいことだ。オペラ座にはガイドによる日本語の見学ツアーもある。参加しないと劇場内が見られないためぜひ参加したかったが、時間が合わず断念。ガイドツアーの時間はオペラ座入り口の掲示板に表示されていた。
◆ウィンナ・コーヒー?
ウィーンでは、ぜひカフェに行こう。オペラ座の近くには、チョコレートケーキのザッハー・トルテで世界的に有名な「ホテル・ザッハー」のカフェや「デーメル」をはじめ、名だたるカフェがたくさん。デーメルでもザッハー・トルテは名物となっているが、今回はホテル・ザッハーのカフェに入った。ここでは、ザッハー・トルテに生クリームが添えられて出てくる。ケーキの周りはチョコレートでしっかりコーティングされ、中はしっとり。そして生クリーム。ほろ苦さと甘さ、そして何より、ホテル・ザッハーで本家本元のザッハー・トルテを食べているという満足感は、何ものにも替えがたい。
周りは観光客が多かったが、窓辺の席で老紳士が一人、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる姿が印象的だった。なお、ウィーンで生クリーム入りのコーヒーをイメージして「ウィンナ・コーヒー」と言っても通じないので念のため。これは完全に和製英語なのである。
◆楽友協会とヨハンシュトラウス像
リング通りから100mほど南に行くと、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の本拠地、オペラ座同様1869年楽友協会がある。2002年1月、小澤征爾がここでウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの指揮をし、その様子はテレビで世界中に放映された。街なかでは、まるでモーツァルトのような衣装を身につけた青年が、各種コンサートのチケットを売っている姿をあちこちで見かけた。
リング通りの外側に面した市立公園には、ヨハン・シュトラウス像が立っており、ウィーンではここもはずせないスポットだ。名作「美しき青きドナウ」を代表とするワルツ170曲を作曲し、「ワルツ王」と呼ばれているヨハン・シュトラウス。かつては黒っぽいブロンズ像だったが、今は金色に輝いている。後ろの白いアーチには寄り添う男女などが描かれている。
花の季節に訪れると、実に平和で絵になる光景だ。花に囲まれ、気持ちよさそうにバイオリンを弾いている姿に心も和む。ここも写真を撮る恰好のスポット。いつのまにか「美しき青きドナウ」を口ずさんでいた。
◆「サウンド・オブ・ミュージック」
左:モーツアルト生誕の家 /右:ザルツブルグの街
モーツァルトが生まれた町ザルツブルクは、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台として知られる。
アルプスの山々を背景に、ギターを抱えて歌うマリア(ジュディ・アンドリュース)と子どもたちの姿や歌は、強烈な印象だった。
モデルとなったトラップ・ファミリーは第2次世界大戦前の1938年、アメリカのバーモント州に渡った。1940年にトラップ・ファミリー合唱団を結成、16年間各地で活動する。 「サウンド・オブ・ミュージック」は、1949年にマリアが出版、1959年にニューヨークのブロードウェイ・ミュージカルで上演された。映画の撮影は1964年にザルツブルクで行われ、翌年封切られた。そして世界的な大ヒットとなったというわけだ。 今ここでミラベル宮殿からホーエンザルツブルク城を見上げると、マリアと子どもたちが「ドレミの歌」を歌ったシーンが目に浮かぶ。
ザッルツブルク ミラベル宮殿とホーエンザルツブルク城
ホーエンザルツブルグ城
合唱団結成から今年はちょうど70年。今春、日本では劇団四季が「サウンド・オブ・ミュージック」のミュージカルをスタートさせた。 トラップ・ファミリーは、広大な紅葉がすばらしいバーモント州ストウのグリーン・マウンテンでリゾート「トラップ・ファミリー・ロッジ」を経営している。 物語のヒロインとなった実際のマリアは1987年に82歳で他界、現在は孫が継いでいるという。
文・写真●関川由都子 Text & Photo by Yutsuko Sekigawa
協力●JTBコミュニケーションズ トラベルライフ編集室
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