今回ご紹介するのは「壁画」です。
1920年代、革命闘争後のメキシコでは「壁画運動」と呼ばれる芸術復興運動が起こりました。
新たな時代におけるメキシコ人のアイデンティティーを呼び覚まそう!
という政府の狙いの元、公共施設の壁画には芸術性の高い多くの壁画が描かれるようになったのです。
特に首都メキシコシティにはその時代に残された多くの壁画がありますが、
その中でも街の中心から南に1時間ほど離れた
国立自治大学(通称UNAM)の中央キャンパスは
そこに描かれた壁画の完成度の高さからか、
世界文化遺産にも指定されています。
それでは行き方ですが、まず、場所が非常に広い大学構内にあるのでアクセスが少々不便です。
メトロ、もしくはメトロバスの大学駅で降りてそこから
PUMAバスという無料の大学構内を走るシャトルバスを使うのが一般的なのですが、
壁画のある中央キャンパスへはメトロ終点の1つ手前のコピルコ駅で降りて
そこから歩いて向かう方が多分わかりやすいです。
いずれにせよ大学が開いている平日に訪れるのがいいでしょう。
↑ そんなこともあってか地下鉄コピルコ駅は構内に壁画がびっしり描かれています。
ライティングも効果的でいい感じです。見る価値アリです。
駅を出てから駐車場などを抜け、そこから壁画の描かれている校舎を歩いていきます。
↑ 最初は歯学部校舎に描かれた
フランシスコ・エッペンス・ヘルゲラ作
「LA SUPERACIÓN DEL HOMBRE POR MEDIO DE LA CULTURA」。
この作者は他にも彫刻や切手のデザインなどでよく知られるアーティストで、
メキシコ国旗中央の国章もこの人が手掛けたそうです。
↑ そしてその向かいにある医学部校舎に描かれた
「La vida, la muerte, el mestizaje y los cuatro elementos」
も同じくエッペンス作。巨大です。圧倒されます。
さらにキャンパス内を奥へと進んでいきます。
↑ すると現れるのがホセ・チャベス・モラドによる大作「La conquista de la energía」。
個人的にはUNAMにある壁画ではこれが一番好きです。
夜の暗闇を恐れていた原始時代の人間(左)が「火」の発見とともにその恐怖を克服し、やがて・・・
タイトルは直訳すると「エネルギーの支配」。
一見、神話や宗教的な世界のようにも見えて実は
革命や社会主義などの政治的メタファーだったりするのが
この時代のメキシコアートの面白いところでしょう。
岡本太郎の世界観にも通じる何かを感じてしまいます。
そういえば渋谷駅にある彼の壁画「明日の神話」はたしかメキシコで制作された作品だったような・・・
などと考えながら中庭の芝生を歩いていると
↑ その岡本太郎とも交流のあった画家シケイロスによる立体壁画
「民衆から大学へ、大学から民衆へ」がありました。
ディエゴ・リベラ、オロスコとともにメキシコ壁画運動を担った三大巨匠の一人であるシケイロス。
この作品も悪くないですが、彼が残した最高傑作を見たければメトロバスに乗って北上し、
↑ シケイロス・ポリフォルム内のホールの「人類の行進」を見に行きましょう。
はっきり言って圧巻です。
この作品を設置するときにたまたま居合わせていたという岡本太郎はこんな言葉を残しています。
「中に入ると、激しくダイナミックに構成されたシケイロスの宇宙。
うなりをあげているような凄まじさだ。圧倒される。
こうなると、もう、いい悪いを超えてる。
シケイロスの作品に賛成であろうがなかろうが、
とにかくそこに一つの宇宙があり、それがシケイロスなのだ」
↑ そして最後は中央図書館に描かれたフアン・オゴルマン作の超巨大壁画です。
この作品何がすごいかって
↑ 建物四面に全部壁画が描かれているのですよ。
世界最大の壁画らしいです。
というかもうここまで来ると「壁画」じゃないような気もしてきますが。
↑ 太陽と月、天使と悪魔、天動説と地動説・・・
相反する2つの要素が対になって描かれている構図は
壁画をはじめとしたメキシコ芸術に多く見られるような気がします。
他にも校舎を出て大通りを渡ったオリンピック・スタジアム正面入り口には
巨匠ディエゴ・リベラによる作品もあります。
また中央キャンパスからは少し離れますが、
大学敷地内には現代美術館や劇場、映画館など文化施設も多くあります。
そこにもぜひ寄ってみることをおススメします。
by バビル2世
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