先日2022年6月12日に開催された第75回Tony Award(トニー賞)皆さんご覧になりましたか?例年通りとても華やかな祭典でしたよね。私のいち押しは、30代女性独身貴族の心を描いた「Company(カンパニー)」や1989年のアメリカ映画「When Harry Met Sally…(恋人たちの予感)」でMeg Ryan(メグ・ライアン)と共演したBilly Crystal(ビリー・クリスタル)主演のMr. Saturday Night (ミスター・サタデー・ナイト)だったんですけど、式典中にパフォーマンスを観れてとてもうれしかったです。
そんな様々な授賞作品の中から本日はBest Performance by an Actor in a Leading Role in a Musical(ミュージカル部門主演男優賞)を受賞したMyles Frost(マイルズ・フロスト)が出演する「MJ the Musical(エム・ジェイ・ザ・ミュージカル)」をご案内します。主演のMylesは1999年7月21日生まれのわずか22歳の若さでトニー賞を受賞したのだからすごい!授賞の時は本当に嬉しそうでしたよね。ピアノは5歳の時から習い始め、そのころからすでに教会で唄ったり、演奏をしたりしていたそうです。高校のタレントショーで「ビリージーン」を歌うMylesのYouTubeビデオがプロデューサーの注目を集め、彼はオーディションに招待され、最終的に役を勝ち取ったそうです。
「MJ the Musical」は50歳の若さでこの世を去ったMJ(マイケル・ジャクソン)の半生を描いたものです。お話は1992年 Dangerous World Tourに向けてのリハーサルの場面から始まります。なお、リハーサルの様子の演技は、実際の公演開始時間よりも前からすでに始まっているので、早めに席についてその様子も見逃さ無いようにしましょうね。「Moulin Rouge(ムーラン・ルージュ)」もそうだったんですが、「気がついたら始まってた」っていう演出のミュージカルって結構多いですよね。
同時進行でコンサート・ドキュメンタリーも制作しているという設定で、ドキュメンタリーを制作するRachelとの会話を交えながら、MJの幼少期を回想するように話が進んでゆきます。子供、青年、大人の各時代を3人のMJが登場し、大スターとして成功を収めるまでの華やかな様子を見ていくのと同時に、その裏で起こっていた家族との葛藤や不名誉な噂話などMJが苦しんでいる様子も見ていきます。「Billie Jean」「Beat It」「Smooth Criminal」など登場する楽曲はいずれも皆さんがご存知なものばかりですので、会話が聞き取れなくてもノリノリで楽しめるミュージカルとなっています。観客の中には立ち上がって踊っている人もいましたよ。気がついたら私もずっと歌ってましたね(笑)。
さて今回は1階席オーケストラ前方のステージに向かって左側のサイド席を購入しました。極度なミーハーなわたしは、舞台全体が見える席というよりは、サイドでも出演者の顔がはっきりと見える前方の席が大好きです。「Tina: The Tina Turner Musical(ティナ・ターナー)」ではたまたま2回観る機会がありまして、1回目はメザニンと呼ばれる2階席、2回目はプレミアムシートと呼ばれる1階席オーケストラ前方中央席でした。2階席でも十分に楽しめたのですが、1階席に座ったときに出演者の顔の表情までじっくり見ることができて感動したことをきっかけに、サイドであっても、できるだけ前方の席を確保するようにしています。プレミアム席はとても高いのですが、サイド席は、舞台の一部が隠れてしまうということもあり、価格が非常にお得になります。実際に「Moulin Rouge(ムーラン・ルージュ)」や「The Music Man(ザ・ミュージック・マン)」ではサイド席のすぐ横を出演者が通過するため、Aaron Tveit (アーロン・トヴェイト)やHugh Jackman (ヒュー・ジャックマン)などのスターが手の届く位置まで近寄ってくるので、私にとっては大興奮間違いなしの最高の席だったのです💗。(本当に手を出しそうだった(笑))でもMJについては「やっちまった!」と思えるほど失敗したと感じてしまいました。 ちょっとサイド過ぎて、会話や歌声は聞こえてくるのに、隠れてしまっているため何してるのか全く見えなかった部分が多くなり、完全に空想の世界に入ってしまうことになります。舞台全体が見えることが前提の振り付けというわけで少し残念でした。MJではびっくりするような視覚効果がふんだんに使用されいますので、皆様はぜひ舞台全体を見渡せる中央席でご覧ください。でも予想通りMylesの演技を目の前で観ることができて大満足でしたよ。
公演が開始して何よりびっくりしたのは音響🔊でした。劇場全体から自分の体にすごいビートを感じるんです!ミュージカルでこんな経験をしたのは初めてでびっくりしました。この感覚は実際に行ってみないとわからないですよ。最近日本のTVでもお姿を拝見する機会も多くなったエレクトリック・ミュージック・デザイナーのヒロ・イイダさんが手掛けているという音楽をじっくり味わうことができました。過去にブロードウェイでは「Beautiful:The Carole King Musical(ビューティフル)」や日本では「デスノート THE MUSICAL」などを手掛けた天才の方です。(でも、正直音楽についてはあまり詳しくなくて申し訳ないのですが…)また、MJの声って結構小さく高めというのがわたしの印象でした。ただ、公演開始前にMylesのインタビューやトニー賞受賞の時のスピーチでの声を聴いていると、その時の声はもう少し低かったような気がします。きっと声も演技をしていたのでしょう。本当に皆さんプロフェッショナルですね。
個人的に印象的だったシーンは第1幕の前半では寝室で幼いマイケルと母親が「I’ll BeThere」を一緒に歌う場面です。もちろんそんな状況は実在しないので空想になりますが、なんか映画「Field of Dreams」 でケビン・コスナーと亡き父親がキャッチボールをするシーン、そんな風に感じて感動して泣いてしまいました。(わかっていただけますでしょうか)公演の初日にはMJの子供であるパリス・ジャクソンとプリンス・ジャクソンの姿があったらしく、「I’ll BeThere」のパフォーマンス中に涙ぐんでいたとかいうリポートをしてました。納得できる逸話ですね。劇場ではオリジナルグッズのチェックもお忘れなく。もともと人気が出ることが予測できていたのか、お土産は種類が豊富でした。公演後はひとの波が出口に押寄せて行きますので、開演前や途中休憩の時に買っておくのがおすすめです。バーでは「MJ’s Moonwalk」 といったようなオリジナルカクテルもありますので是非お試しください。🍸
2時間30分の公演時間ですが、あっという間に終わってしまったという印象でした。使用されている楽曲は短いものを含めると40曲にも及びます。MJの十八番ともいえるムーン・ウォークもかっこよく登場します。MJが一生をかけて作り上げてきた動きを、わずかな期間で再現した出演者や制作に携われている皆さんの努力にこころから脱帽します。MJ the Musical(エム・ジェイ・ザ・ミュージカル)は引き続き好評公演中です。是非皆様もお楽しみください。
Neil Simon Theatre:250 W 52nd St, New York, NY 10019
BY おせっかいKEVIN