カーボーイはアメリカ人の男の象徴?!
昔、テレビで「ウーム、マンダム」とドスの聞いた声でチャールス・ブロンソンが言う男性化粧品コマーシャルがあったのを覚えていらっしゃるでしょうか? 1970年頃に流行ったCMなので、平成生まれの人は何の事かさっぱりわからないと思いますが、モニュメントバレーを駆け抜けるカウボーイ姿のチャールス・ブロンソンンの日焼けしたなんともワイルドな男らしい顔がすごく印象的でした。 なぜ化粧品とは全く縁の無いカーボーイが出て来るのか疑問にも思いませんでしたが、この化粧品を使えば男らしく、クールになれるんだと洗脳された人は多かったでしょう。何を隠そうこの私も大学に入るとき東京に出て来てこの化粧品を買った一人でした。
さて、日本では全く無縁の世界ですが、イギリス人の男の世界に騎士道あるように、そして日本人のそれには武士道があるように、カウボーイはアメリカ人の男の生き方のある意味で象徴にもなっています。そのカウボーイに必要な衣装、道具は数多くありますが、一番身近なのは何といってもジーンズとブーツと大き目のバックルのついたベルト、そしてカウボーイハットと洒落たウェスタン・シャツです。これらが揃えば拳銃を持たなくても立派なカウボーイです。
南北戦争時代には500万人もいたそうで、今では減ったとは言えテキサス州、カンサス州、ユタ州、アイオア州、コロラド州など、まだまだ田舎に行くとカウボーイを普通に見かけます。また税金対策で牧場を持っているお金持ちも居て、街中でも週末は洒落たウェスタンシャツを着て、カーボーイルックで粋に決めている男性を良く見かけます。男なら一度はやってみたいスタイルですね。レーガン大統領やニコラス・ケイジ、エリック・クラプトン、エルビス・プレスリー、ポールマッカートニー、ロバートレッドフォードなどのセレブもウェスタンシャツを着たカーボーイルックの写真を良く見かけますが、彼らに共通しているのは決ってあるメーカーのウェスタンシャツを愛用していた事です。
そのメーカーとは、コロラド州デンバーににある、まさにウェスタン・シャツの元祖とも言えるロックマウント・ランチウェアー社、創立は1946年です。ご存じだったでしょうか? シカゴとサンフランシスコを結ぶ寝台列車カリフォルニアー・ゼファー号の中継駅であるユニオン駅に近く、コロラドロッキーズのクアーズ球場からも歩いて行けるワジー通りに創業時代からお店を構えていて、今ではデンバーの名所の1つになっています。なんだか埃っぽい古臭い店構えでショーウィンドウも冴えないので、知らないと通り過ぎてしまいますが、ブーツ、カーボーイハットなどウェスタンファッションの本家本流の本物がズラリ、老舗に相応しくビンテージものも揃っています。
今ではウェスタンシャツと言えば、スナップボタン(ホック)と胸元や袖に「フリンジ」と呼ばれる装飾を施した「さがり」、のこぎり型のポケットのデザインが当たり前ですが、実はこれもロックマウント・ランチウェアーの創業者ジャック・ウェイルの発案でした。ダブダブのシャツが当たり前だったカーボーイ・シャツを、スリムフィットにし、よりマッチョに見えるように肩を二重にしました。タバコやペンを直ぐに取り出せるようにと胸ポケットをのこぎり型にし、荒仕事中に良く飛んでしまうボタンの替わりに片手で留められるスナップボタンを採用しました。 不器用なカーボーイにとっては面倒なボタン付けから開放されて大変便利と、瞬く間にヒット商品になりました。ポールマッカートニー愛用の人気のモデル6790には、なんと17個ものダイヤモンド型のスナップボタンが付いています。セレブやカントリーウェスタンのシンガーが着ているのがまさにこのモデルです。古いですがクラーク・ゲーブルがマリリン・モンローと主演を演じた「荒馬の女」で着ていたのもこの原型とも言えるモデル6939 でした。最近ではアカデミー賞を受賞したワイオミングの牧場が舞台の映画、Brokeback Mountainにも登場しています。ロックマウント・ランチウェアーはウェスタンシャツの原点を造ったメーカーで、デニムのシャツはここから生まれたと言っても過言ではありません。
カーボーイ魂を貫いた創業者
同社にはシャツの他にもう1つ有名になった事があります。 それは創業者のジャック・ウェイルはアメリカで最年長のCEOだった事です。彼は1946年に、ロッキー山脈の美しさに惚れ込んでインディアナからデンバーに引っ越しました。そして30才でロックマウントランチウェアーを創業して以来2008年に107才で他界するまでの77年間CEOを務めたのです。しかも亡くなる直前まで毎日出社していたそうです。日本でもスズキの86才の鈴木会長、カシオの87才の樫尾会長など現役バリバリのトップは多いですが、107才まで現役だったという例はありません。
ジャックは習慣をかたくなに守る事で有名でインディアナからデンバーにダッジに乗って来て依頼、死ぬ直前まで古いダッジに乗っていたそうです。ウェスタンシャツの収集家が居ることを信じなかったそうで、孫のスティーブがビンテージのシャツをディーラーが持っているのを発見して、新品のシャツ2枚と交換してもらった事を報告した時、「なんだと、お前は40年前に$3だったものを新品のシャツと交換したのか?!」と言ったとか。また60才でタバコを止め、90才で酒を止め、100才で肉食を止めたものの、1週間に2回、ショットで飲むジャック・ダニエルだけは血を薄くする薬だと信じて欠かさなかったそうです。 日本人にとって、好きな仕事を何才になっても続けられるという事は美徳なのですが、ジャックにはかないません。
ロックマウント・ランチウェアーのシャツは通販で世界中(南極にも発送した)どこからでも買う事ができますが、お店はデンバーのワジー通りの本店1件のみ。今はお孫さんのスティーブが愛犬ワジー君とお店を切り盛りしています。気になるお値段は$80前後と少し高めですが、Mad in USAですし不思議にふわっと身体に自然にフィットして着心地は抜群!やっぱり本物はどこかが違います。是非一度お試しあれ。
【関連記事:旅のエスプリ】
・今年はアメリカ国立公園の100歳の誕生日。もっとも訪問者の多いのはどこ?
・今はまさに訪日ブーム では100年前の訪日はどんなだったのでしょう?
・1964年の東京オリンピックの前年の実験衛星中継の成功 その映像が映し出したもの?
・ボストンで是非訪れてみたいイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館
・世界中のコンサートピアニストに愛用されるスタインウェーのルーツはキッチン
・ニューヨークタイムズ誌が選んだ日本の秘境とは!
・ポンコツ車に魅せられた化粧品会社の経営者 クラシックカーの殿堂
・ガイジンの日本訪問記から読み解く、昔の日本人は?そして今との違い
・90年前に日米友好の願い託された青い目の人形と市松人形の交換
・メキシコ大使館はなぜ東京の一等地に? 強い絆で結ばれた日墨関係のルーツを探る
・ハワイ王族末裔との約束の結晶 リゾートの理想郷、ハワイのマウナラニが持つ意味
・繁盛している旅館を突然廃業、そして10室しかない宿にしてしまったのは何故?
・米国本土を爆撃した唯一の日本兵がレーガン大統領から星条旗を寄贈された理由
・クレージーホースに魅せられたケビン・コスナー ダンス・ウィズ・ウルブスを製作
・ロダンの誘いを断った彫塑家、川村吾蔵とは?
・ルーズベルト大統領はアメリカ人で初の柔術茶帯取得者だった
・神の化身に征服されたアステカのチョコレート王
・砂漠のカジノタウン「ラスベガス」に君臨した3人の帝王とは?
・これは地上に描いた星座なのだろうか?超弩級の不思議「ナスカの地上絵」
・マチュピチュの朝日を見る前に死ぬわけにはいかない。インカ帝国の秘密都市?
・全盛時、数十の媒体を傘下に収めた新聞王ハーストの夢の城とは?
・孫の身代金を値切った石油王とは? ギネスブック認定「世界で最も裕福な人」
・古代ローマ都市ポンペイ 遺跡に残されたメッセージとは?
・日本人移民一世は正義と権利獲得のために闘っていた!
・19世紀後期に中世の城ノイシュヴァンシュタインを建設 騎士伝説とワーグナー
・チョコとお蚕がつないだ日伊の縁 イタリア使節が見た幕末の日本とは?
・国交樹立150周年 日本とスイスの意外な共通点とは?
・黒船来航の目的は捕鯨のための開国?アメリカのアラスカ購入の陰に日本
・杉原千畝の命のビザ ユダヤ難民の日本経由欧州脱出劇 その陰にJTBの尽力
・国際的日本料理シェフ、松久信幸と彼から巣立った成功者たち”NOBU HOTEL”
・イランに取り残された絶対絶命の日本人216名を救出したのは、トルコの恩返し!
・駐日大使だけじゃない、ケネディ家と日本の縁 昨日の敵は今日の友
・リンカーン大統領に会った唯一の日本人 アメリカ人として幕末の日本に帰国
・911の標的、WTCは日系人がつくった? 人種差別と闘いながら夢叶える
・観光だけじゃない、ハワイと日本の深い縁 ハワイ王室と日本皇室の政略結婚?
・アメリカ人に愛された日本人金メダリスト”硫黄島で投降を呼びかけられるも戦死
・カリフォルニアのワイン王は薩摩の侍? 13歳で海を渡り、偽名のまま生涯を過ごす
・本物のロンドンブリッジはどこにある? 世界最大の骨董品、コロラド川へ
・運慶とミケランジェロ、その意外な共通点 「大理石の中の天使を自由にする」
・策士・マッカーサーとミズーリ号艦上の降伏文書調印式 マイクロマネージメント
・NYセントパトリック教会に響いた君が代は誰のため? 日本人化学者と南部令嬢
・CIA, KGBも興味を示した古代インカの情報システム?遺跡に魅せられた日本人
・レオナルド・ダ・ビンチはナポリタンを食べたのか トマトのルーツはペルーだった
・ブルックリン・ブリッジ建設の陰に日本のプリンス?ラトガースに学んだ幕末の獅子
・ペリー提督の末裔のワイナリーは? カリフォルニアワインと「パリスの審判」
・150年前米女性を熱狂させた日本人男性アイドル?「侍を一目見よう」NYで大歓迎
・日本人留学生第一号はやはり、あの人!そしてその人はフリーメイソンだったのか?
・アメリカとイギリスに上陸した日本人第一号とは?万次郎の先を行っていた国際人
・サムライ達がメキシコで集団洗礼を受けた?ヨーロッパへの中継点でキリスト教徒に
・日本とスペインの縁をつないだのが独眼流!「日西交流の歴史今年で400周年」